スイスチーズ的学習の危険性 ~サルマン・カーン氏に学ぶ~


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スイスチーズ的学習」という言葉をご存知でしょうか。

これはアメリカの教育事業家、サルマン・カーン氏が用いた言葉です。サルマン・カーン氏はカーン・アカデミーというNPOの創設者で、映像授業を活用した効果的な学習法を推進しています。彼の著書の邦訳である『世界は一つの教室』はとても素晴らしい内容なので、読んでない方は是非一読して欲しいと思います。教育関係者でなくても、子供を持つ親ならば大いに勉強になると思います。



彼は上述の書籍の中で、伝統的な学習法に対して疑問を呈しています。

・・・テストという代物について考えてみましょう。合格点はどのくらいか?たいていの場合、75点~80点で合格です。・・・でも、ちょっと考えればわかるはずですが、それはやはりどこかおかしい。学習内容は互いに関連しています。・・・最初の方の理解があやふやだと、あとで非常に困ったことになります。なのに私たちは、75点や80点でも平気で合格にします。・・・あるいは管理上の必要からなのかもしれません。・・・本当はできていないのに「できました」と告げているのです。・・・これでは生徒たちを失敗するよう仕向けているようなものです。・・・75%というのは、知っておくべきことの4分の1が分かっていないということです。・・・みなさんはタイヤが三つしかない車で長旅に出かけますか?あるいは理想の家を建てるのに、基礎は75~80%でよしとしますか?


彼はこのように学習上の穴をそのままにして次へ次へと進む学習を、スイスチーズ(穴だらけのチーズ)になぞらえて呼んでいるわけです。この部分を呼んだ時、私も思わず大きく頷いていました。日本とアメリカの違いはあっても、学校で行われていることはまさにこの通りではないでしょうか。

知識の抜けや理解不十分な所は「とりあえず放置」して、スケジュール通り、カリキュラム通りに授業を進行させる・・・。今も昔も学校で行われているのはこうした指導です。授業スピードについていける子は良いとして、ついていけない子はどんどん遅れていくことになります。このように分からない状態がずっと続くと、最終的には教科そのものが嫌いになります。

これは決して学校の先生が悪いわけではありません。学校というシステムの問題です。落ちこぼれが大量に出るようなシステムになっているのです。アメリカの場合は家庭教師が、日本の場合は塾が、こうして落ちこぼれた子供達の受け皿となってきたと言えます。

サルマン・カーン氏はこうしたスイスチーズ的学習を批判すると共に、映像授業を用いたマイペース学習の優秀性を訴えています。映像なら理解できるまで何度も視聴できるメリットがあります。理解が遅い子は完全に理解できるまで必要な部分を学習し、理解が速い子はどんどん次の単元に進めば良いわけです。テスト問題をネット上にアーカイブしておき、自分の好きなタイミングで受けられるようにしても良いでしょう。自分の足で一歩一歩階段を登るような、着実な勉強スタイルです。

この学習法は一見とても時間がかかりそうに見えますが、カーン氏はそれを否定しています。私も同感です。理解が遅くなる理由は、結局それ以前の内容をしっかり理解できておらず、前に戻ったり抜けている部分を補う手間が大きいからです。先を急がずに一つひとつ理解していく方が、遅いように見えて実は最も速いということです。

個人的にはこのような学習スタイルを学校が取り入れて欲しいし、塾にも取り入れて欲しいと思っています。残念ながら、学校には文部科学省の定めたカリキュラムという縛りがあるため難しいでしょう。塾も映像授業系の塾はたくさんありますが、伝統的なやり方(理解度よりもペースを優先させる方式)にこだわっている塾もまだ多いように思います。短期的な成果を優先していくと、そうした指導にならざるを得ないのでしょう。

学校や塾の変化に期待できないとしても、サルマン・カーン氏の提唱する学習法を取り入れることは可能です。スタディサプリのような優良の映像授業コンテンツは今やたくさんありますし、今後も増えていくでしょう。それらを活用してマイペース学習を進めていけば良いのです。

誰にでも言えることですが、学習は自分が十分理解できるまでじっくり取り組むべきです。何事も理解が速い"才能のある子"は確かにいますが、その子のペースに合わせる必要はありません。マイペースで「分かったぞ」という確かな手ごたえと感覚を積み重ねていけば、次第に勉強も楽しくなり、成果もついてきます。あやふやな理解のまま先に先に進んでしまうことが全てのつまづきの原因なのです。


最後に、サルマン・カーン氏のスピーチ動画です。堅苦しい内容では全くなく、とても面白いので是非ご覧ください。(右下のアイコンからJapaneseを選択で日本語字幕が付けられます


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